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Another Tempest

孤独な風来坊である管理人が、さまざまな物事に勝手気ままなことを言いながら、エンタメ情報を発信するブログです

書籍のススメ 〜 小説入門におすすめの8選 編 〜

 

 

 書籍のススメ ~ 小説入門におすすめの8選 編 ~

 

 
 現代では読書文化の衰退が嘆かれていますが、新しい世界を求めて文学作品に手を伸ばす若者もきっとまだまだいるはずです。世の中には実にさまざまな分野の名著が数多く存在しており、そこには自分の想像の範疇を超えた目からウロコな内容が綴られていることもしばしば……。ぜひとも「これは自分のために書かれた本だ!」という運命の一冊に出会ってほしい。管理人もささやかながら、そう願っています。
 今回は、どちらかというと読書が苦手な人にオススメできる文学作品を選出してみました。また管理人なりに、これは若者向けだと思えるものを中心に。人気作を考慮したりもしたので、一度くらい見聞きしたことのある作品が並んでいるかもしれません。どれも比較的とっつきやすく楽しみやすいものを意識したつもりです。文学に馴染みがなく、以下の小説に目を通したことがないという方は、ぜひ試しに手に取ってみてください。

 文学の楽しみを知って自分の世界を広げたら、あとは自ら書店に脚を運んで、知的好奇心を思う存分に発散させてください。

 


 1、村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
 

  もはや日本を代表する小説家として不動の地位を確立している村上春樹。海外でも文学界のビートルズとまで言われるほど人気があります。
 この小説の物語は、高い壁に囲まれ、外界との接触がない閉ざされた街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす<僕>の物語 [世界の終り] と、老科学者により意識の核にある思考回路を組み込まれた<私>が、その回路に隠された秘密をめぐって活躍する物語 [ハードボイルド・ワンダーランド] が、交互に展開されていきます。複雑な内容と構成ですが、二つの物語が同時進行していくおかげで読んでいても飽きることがありません。またすぐれたユーモア感覚や若々しい感性もフィットしやすいのではないでしょうか。
 ネームバリューのせいで敬遠されがちなところもありますが、現存する小説家の中では世界規模でトップクラスであることは間違いないと思います。文章は読みやすく物語は新鮮で、非常に魅力的な内容となっています。おそらく読書嫌いな人でも、素直に小説を楽しむ体験ができるでしょう。この作品は文庫本で上下セットと長めですが、やっぱり最初は短めのものがいい……という方は『風の歌を聴け』を選ぶのもいいかと。白昼夢を見ているように、日常を離れた数センチ上を浮遊するような不思議な感覚をもたらします。ぜひその独特の小説世界を堪能してください。

 

 
 2、川上未映子『ヘヴン』
 

  現代日本文学のなかでは人気作家の一人でしょう。この方は『乳と卵』で芥川賞を受賞されています。管理人は他の作品にあまり馴染みがないのですが、この『ヘヴン』だけは一読して抜群に良いと感じました。物語の舞台は中学校で、登場人物たちも中学生です。しかし単なる学園ドラマとは一線を画します。内容はどこまでもシリアスで冷ややか。モチーフとして虐めを扱っており、それぞれ集団社会における人間的な葛藤を抱えながら、強者と弱者の相容れない理屈などが、非常に現実的な目線で論理的に展開されていくさまは、現代人の内に潜む問題の核心にじかに触れてきます。とても読み応えのある作品です。
 文章の瑞々しさを表す、その思考や感性にどこか颯爽としたところがあるので、若者にはハマりやすい気がします。個人的に、この作家にはいわゆる「意識の流れ」という文学的手法に通ずるものがあると感じます。物語もちょうどいい長さで、若者が共感しやすい土壌も揃っているように思うので、ぜひオススメです。


 
 3、太宰治人間失格
 

  これはおそらく読書習慣のない人でもご存知の作家とタイトルなのではないでしょうか。率直にいえば、鬱屈とした心情を抱えているティーンエイジャーにとっては身につまされる内容の書物です。良くも悪くも、そこに描かれている物語に若者は強い共感性を見出して影響を受けるでしょう。
 あらすじとしては、大庭葉蔵という一人の男の苦悩に満ちた人生が、三つの手記による独白のような形をとって語られていきます(ただし、最初の”はしがき”と最後の”あとがき”は第三者の目線で書かれます)。少年時代から青年期にかけての時間の流れとともに、さまざまなエピソードを交えて進行していくので、非常に読みやすいかと思われます。なにより、そこに書かれていることが(おそらく)誰にとっても真実めいたものに映って、自分をあばかれていくような感覚が面白いとさえ感じられるでしょう。自分は周りの人間とどこか違う、世間に馴染めないはぐれものだ……という疎外感を抱いている若者には、特殊なバイブルとなる本かもしれません。どちらにしろ読んで損はない名作なので、ぜひ手にとってみてください。

 


 4、東野圭吾白夜行
 

  現代日本のミステリー作家の中ではかなり有名な方。読書に馴染みのない人にも比較的読まれている印象があるジャンルなので、選ばせてもらいました。ドラマや映画にもなってヒットした、200万部以上売れているベストセラー作品です。管理人は普段あまり手を出さないタイプの小説なのですが、これは読んでみて面白いと感じました。

 あらすじは、19年前に大阪で起きてそのまま迷宮入りになった質屋殺しの事件を軸に、被害者の息子・桐原亮司と容疑者の娘・西本雪穂による、その後の悲劇的な人生を、なぜか二人の周囲で頻発する不可解な凶悪事件を挟みながら、淡々と描かれていきます。その数奇な出会いと残酷な運命によって引き裂かれる人の心に、思わず身震いしてしまいます。
 一見ありがちな設定にみえますが、映像化されてヒットしたのが頷けるくらい、非常によく出来たドラマ仕立ての小説です。とかく悲しい内容ですが、人間の有り様がよく描かれていて面白いです。

 


 5、宮部みゆき模倣犯
 

  おなじく日本のミステリー&サスペンス作家では名の知れた方の作品。文庫で全5巻という初心者には向かない長めの小説ですが、人によっては読書の喜びを知る機会になりうる作品かと思われます。まずは1巻を読んでみて、続きを追うかどうか考えましょう。
 大まかなあらすじとしては、「天才」を自称する犯罪者の暴走を描いたサスペンスです。それぞれ段落別に、被害者・加害者の両視点からひとつの事件を描いた特異な内容となっています。東野圭吾の『白夜行』同様、人間模様がよく描かれていますし、込み入った設定や事情をていねいに読み解いていくのも一興かと思います(それがサスペンスの醍醐味かもしれませんが)。人によっては読破するのが疲れるかもしれませんが、とりあえずとっかかりに触れてみるだけでも十分です。ちなみにこれもドラマ・映画化されていますので、興味のある方はそちらもチェックしてみてはどうでしょうか。

 


 6、J・D・サリンジャーライ麦畑でつかまえて
 

  世界中の若者のバイブルとして現在も支持されつづけている青春小説の古典的名作。ジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマンや、ロナルド・レーガンを射撃したジョン・ヒンクリーが愛読していたことで、曰く付きの小説になってしまいましたが……。作者のJ・D・サリンジャーは後年にかけて表舞台に出てこない隠居生活を徹底して続けており、謎めいたカリスマ的存在として世間に認知されていました(2010年1月27日、永眠)。
 あらすじとしては、ホールデン・コールフィールドという17歳の少年がクリスマス前のニューヨークの街を孤独にさまよう、という話です。随所でいろいろなエピソードが挿入されますが、ほとんどが主人公の精神論的な独白で埋めつくされている印象です。そういう意味では、太宰治の『人間失格』とも通ずるところがあるかもしれません(哲学的と評することも可能でしょうか)。
 非常にクセのある文体で好き嫌いが分かれそうですが、内容自体はとてもいいので、一度ハマればのめり込んでしまう小説です。持ち味は、若者特有の神経症的なイノセンスでしょうか。誰のどの小説とも似ていない唯一無二のオリジナリティを発揮しているという点でも、すぐれた文学作品であるといえます。

 個人的には、文学に馴染みのない方は村上春樹訳のほうをオススメします。そちらの方が読みやすいかと思うので。


 
 7、トルーマン・カポーティティファニーで朝食を
 
  

  天才作家として世に名を馳せた存在。才能を持つものというのは、こういう人のことを言うんだろうと思わず頷かされます。サリンジャーとともに未だにそのカリスマ性は衰えません。
 本作はオードリー・ヘップバーン主演で映画化されたことで有名ですが、原作の小説も素晴らしい内容となっております。主役はホリー・ゴライドリーという若き女性で、彼女がニューヨークの街を舞台に自由奔放に生きる様が、作家志望である主人公の目線で描かれています。この瑞々しく物哀しい世界観は病みつきです。
 サリンジャーもそうですが、物語云々よりかは独特の文体を体感することに意味があるように思われます。なので、早い話いちど手にとってみて実際に目を通すのがいいでしょう。やはり天才と称されるだけあって、美しい文章の至るところに才能の発露がみられます。持ち味は、幻想的な比喩と登場人物たちのストレンジな感性と緊張を和らげるユーモア。風景描写も緻密で、細部に凝っています。ちなみに新潮から出版されている文庫本は短編集で、全部で五つの話が収録されています。どれも素敵な話です。

 
 8、チャールズ・ブコウスキー『町でいちばんの美女』
 
  

  これは管理人の個人的な推薦ですが、行儀のいいような体裁の文学ばかりじゃなくて、もっと世間から大胆に逸脱したものが読んでみたいという方にオススメの作品です。酒・女・金という禁忌三原則をこれでもかと破りとおしてしています。しかし、ただ下品なだけに終わらず、噓いつわりを嫌うような視点から、独特の物悲しさが描かれてもいます。ブコウスキーの作品はすべてが地続きというか、どの小説を読んでも結局、酒・女・金にまつわる物語が展開されていきますが、なぜか読んでいて飽きることがありません。平易な文体で書かれており、同時に人間心理の根本を突いてくるような鋭さがあるためでしょう。まるで放浪する路上生活者の目で世間を眺めているかのような、あるいは世界の果てから俯瞰で物事を見ているかのような感覚……。なんてタフな世界なんでしょうか。そこには妙な爽やかさがあります。
 『ありきたりの狂気の物語』『詩人と女たち』とどれもオススメです。