Another Tempest

孤独な風来坊である管理人が、さまざまな物事に勝手気ままなことを言いながら、エンタメ情報を発信するブログです

映画『ガンジー』レヴュー

 

 

 

 

 ガンジーは1982年に全米公開された(日本は翌年公開)イギリスとインドによる合作映画です。第55回アカデミー賞作品賞を受賞しております。
 少々古めですが、なかなか充実した見ごたえのある映画で、なにしろ上映時間が3時間という……。私は大の映画好きですが、それでも2時間半を超えてくると大抵は集中力が途切れてくるので、一旦休憩を入れたりしなくてはならなくなります(もちろん自宅で鑑賞している場合に限りますが)。
 映画の内容は関係なくて、ほとんど生理現象なのでどうしようもない。
 


 さて肝心の内容ですが、その名を知らぬ人はいないであろう、インド独立の父と呼ばれる宗教家・政治指導者であるマハトマ・ガンディーの自伝的映画となっています。彼が弁護士だった青年時代から、偉大な指導者となって暗殺されるまでを描いたものです。

 

 いわゆる歴史映画なので、エンターテインメント的な側面はほぼ皆無ですが、波乱に満ちた人生を凝縮したストーリーになっているために、ちょっと見逃すと話の筋を見失ってしまうようなスピード感があります。場面場面の移り変わりは緩やかに感じられながらも、何気に展開は早いので、だれることなく観られるのではないでしょうか。
 その激動の時代を余すことなく詰め込んでいるせいか、もの凄い勢いでガンジーは歳をとり、なにやら悟りを開いていったかのような錯覚に陥りますが、おそらくだいぶん省略してこのペースなんでしょう……。
 


 やはり扱っているテーマが重いので、一難去ってはまた一難といった具合に勃発する政治的な問題に伴い、知的な(ややこしい)会話がひっきりなしに交わされ、聞き逃したりしているといつの間にか議題がすり替わっていたりします。でも印象的なセリフが多く、言葉のやり取りを聞いていて単純に面白いし、教訓として学ぶところもあります。とにかく、いろいろと考えさせられる映画です。
 


 また、合間に映し出される風景がとても美しいです。とくにガンジーがインド全土を列車で旅している場面は印象的。つかの間の休息を表すように、セリフのない穏やかな映像が淡々と流れます。
 ガンジー役を演じた主演俳優のベン・キングズレーの風貌があまりに本人と酷似しているせいもあって、あたかもドキュメンタリーを観ているかのように勘違いしそうにもなりますが(実際、現地の住民たちの多くは「ガンジーが生き返った」と思い込んで、彼の元に参拝に訪れたりしたそうです)。
 当時のガンジーが、自分の知り得なかった国の実情を前に、いかにして心を痛め頭を悩ませていたか想像させられます。


 
 私が思うに、エンターテインメント作品としては観られないけれど、たとえばガンジーのことをよく知らない人が興味本位で観ても、けっこう楽しめる内容ではないかという気がします。なんとなく歴史を学んでおきたいという姿勢の人でも。
 かくいう私もマハトマ・ガンディーという人物に関してそこまで詳しくなかったのですが、これを観て深い感銘を受け、彼の著書を熱心に読み漁るまでに至りました。『獄中からの手紙(岩波文庫)』ガンジー自伝(中公文庫)』などを。
 またそれ以来「非暴力」の本当の意味や意義についても、よく考えるようになりました。
 


 それから30年以上前の映画なのにもかかわらず、映像がちっとも古く感じません(少なくとも私にとっては)。この映画をいかに大事にして、伝えたいものがあるからこそ、なるべくクオリティの高い映像で撮ろうという、監督を含む撮影人の意気込みをまさに反映しているようです。
 余談ですが、この映画はエキストラを30万人も動員しており、それは最多記録としてギネス・ワールド・レコーズに認定されたそうです。凄いですね。
 福岡県久留米市岩手県盛岡市の人口がだいたいそれくらいみたいです。ちょっとイメージ湧きにくいですが……。


 
 やみくもに理性を見失いつつある、きわめて暴力的な混乱の最中にある現代でこそ、観て響くものがある映画ではないかとも思います。
 時代を超えて、なぜ人や国がこうも躍起になって争い合わねばならないのか、またその時に自分はどういう態度を示すべきなのか。そうやって自分を見つめ直すきっかけにもなります。
 ぜひとも、一人で時間をかけてじっくりとご鑑賞ください。私はときどきこの映画やガンジーの著書を思い出しては、かつてはこんな人もいたんだ、と振り返るようにしています。自分にとっての正しさを省みるための勇気が得られるように。