読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Another Tempest

孤独な風来坊である管理人が、さまざまな物事に勝手気ままなことを言いながら、エンタメ情報を発信するブログです

ボブ・ディランについて

 

  こんにちは。

 

 去年にノーベル文学賞の受賞が決定したミュージシャンのボブ・ディランが、来る3月31日にニュー・アルバムをリリースするそうで、その新作『トリプリケート』についての長文インタビューがソニー・ミュージックの公式サイトに掲載されています(全文翻訳)。ファンの方は必読です。

 つい先日には、ツアー先のストックホルムスウェーデン・アカデミーからメダルと証書を授与されたと報道されていましたね。

 

 ボブ・ディラン 新作アルバム『トリプリケート』についてのインタビュー

 http://www.sonymusic.co.jp/artist/BobDylan/page/interview_1703

 

 御年75歳になるはずですが、ポール・マッカートニーにしろストーンズのミック&キースにしろ、未だに現役であり続けていることにもはや畏怖の念を感じます……。海外のロックスターたちは一体どういう肉体構造をしているんでしょうか? 不思議でなりません。私は今30歳なのですが、45年後の自分を想像してみても、すでに塵芥と化している光景しか思い浮かびません……。とてもじゃないけど、彼らのようなバイタリティが残っているとは思えないです。

 そもそも芸術家という人種が、常人の域をはるかに超えた無尽蔵のエネルギーを内に秘めているとしても、さんざん歌って演奏して酷使してきたカラダなのだから、多少なりとも悲鳴をあげているはずだ……と予測するのは普通ですよね? もちろん健康管理や身体能力を維持するために専属トレーナーが付いていたりするのでしょうが。生まれつき強靭な肉体を授かっているのもあるのでしょうか。だとしたら羨ましいとしか言いようがありません。体を壊すことほど、苦痛なこともありませんからね。個人的にはどういう生活を送っているのか、健康の観点から教えてもらいたいです。でも、音楽は人を若々しくする力があるんだろうなとも思いますが。

 

 ボブ・ディランの新作については、インタビューを読むかぎり、どうも前作『フォールン・エンジェルズ』、前々作『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』と連なるトラディショナル・スタンダード・ナンバーのカバー作品となるようです。しかも3枚組という特大ボリューム。ディラン曰く、テーマが同じなのでまとめてリリースしたかったらしいです。収録されているのは、主にフランク・シナトラがレパートリーとしていた定番中の定番といわれる楽曲。「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」や「センチメンタル・ジャーニー」、「スターダスト」など。全30曲を、ディスク1枚につき10曲収めた形となる様子。私も暇を見つけて聴いてみようと思います。

 

 それで、ノーベル文学賞やら新作の発表やらが重なった折もあって、私は久しぶりにボブ・ディランの伝記映画『ノー・ディレクション・ホーム』を鑑賞しなおしてみました。これは収録4時間というとてつもなく長尺なムービーなのですが、夜な夜な一人お酒を嗜みながら、時間を分けて観ました。過去の映像を交えながら、彼のキャリアにおける人間関係についても知り得るので、ファンにとっては非常に興味深い映画です。そしてこれを観ながら、私は淡々とボブ・ディランとの邂逅などを振り返ったりしていました。

 

 私がディランの音楽と出会ったのは、およそ17年前の中学1年生のときです。隣県に住む叔父の家に家族で訪ねた時に、勝手に自室に忍びこんでCD棚を漁り、そこから『フリーホイーリン』のアルバムを抜き取って持ち帰ったのがきっかけです(完全に泥棒ですが、のちに叔父は笑って許しそのアルバムを私にくれました)。
 幸いにも、そのアルバムにはライナーノーツや邦訳された歌詞が細かく記載されていたので、当時は洋楽に馴染みのなかった私もめずらしいものを発見した喜びで、好奇心の赴くまま未知の領域を開拓するように、食い入るようにそれらを読み込みました。
 初めて聴いたディランの歌は、とにかく凍えるような印象。まるで冬の日の道端や地下道で日銭を稼ごうと路上ライブをする彼の姿がみえるようで……ただただ孤独で、なおかつ真実に限りなく近い何かが宿っていると思わされる響きが感じ取れました。あらゆる装飾を削ぎ落としたような素朴さで、かつ気高く、音は温かいのに張りつめたような空気を持っていました。綴られた歌詞の意味を理解するのは難しかったけど、彼の鳴らす音楽の意味を(その片鱗を担う一端でも)直感的に悟ったような気がしていました。このミュージシャンは人生そのものを、それも嘘偽りのない眼で見つめた率直な感想を語っているのだと。それはどこにも属せない、孤高の存在であることを示しているようでもありました。
 そして私は当然のようにボブ・ディランに憧れ、自分もアコースティック・ギターを始めることになり、自分で曲をつくり歌詞を書くようにさえなりました。同級生の友人らとバンドを組んで、地元の公民館で小規模のライブをしたりもしました。もちろん、ある日には単独で路上に出て木枯らしを得意げに浴びながら、お粗末な演奏を披露したりもしました(長い歳月を経てオリジナル曲を録音したテープが発掘されたときは、まさに赤面ものです……)。
 それから私は肌寒い季節になると思い出したようにディランの歌を聴くようになりましたが、でも成人してからしばらく遠ざかって(なぜか一時期、彼の声が受け付けなくなった経験もしました)、25歳を過ぎたあたりからまたちょくちょく耳を傾けるようになりました。そして何時ぞやに、ぐうぜん深夜に放送していた『ノー・ディレクション・ホーム』の映画を観ました。そこで初めて、しっかりと実際に演奏して語る彼の姿を映像で目の当たりにして、もの凄くこみ上げてくるものがありましたね。彼はいつも真剣で、それは音楽に対する以前に人生に対しての姿勢であり、生まれ持った天性の資質とタフネスであり、まぎれもない孤高の人・ミュージシャンでした。想像以上の人物にうつり、私は素直に感動しました。

 

 ボブ・ディランは、現在37枚ものオリジナル・スタジオアルバムを発表しているわけですが、例えば初めて彼の音楽を聴く人に向けて、あらためてその中でいちばんのお勧めを選んでみようかとも考えてみました。ですが、とてもじゃないけど出来ませんでした……。37個もある選択肢の中から1つを選出するというのが、ちょっと無理な話です(ひとつひとつの内容が充実しすぎています)。
 またその時々によって好みが変わるので、これがマスターピースだというものを断定することが困難なんです。でも今の自分が人に勧めるなら、『追憶のハイウェイ61』か『ナッシュヴィルスカイライン』でしょうか。もちろん『フリーホイーリン』もいいです。『欲望』も好きですけど……とキリがないのでここら止めておきます。

 

 それでは、また。